ミニマリストの小宇宙

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マイナンバーで可能になるのは資産課税だけじゃない。「支出税」ってどんな税制度?

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所得税の諸問題を解決する「支出税」

支出税という税制度をご存知でしょうか。

あまり聞かない言葉ですね。

支出税は、所得税の構造的な欠陥を解決するものとして、1974年に米国の税法学者アンドリュースによって提案されましたが、

現実的ではないとされ、これまでに導入された例はありません。    

 

所得税の問題とは何か?

・累進課税が行き過ぎると、稼ぐモチベーションに影響する。

・累進課税が行き過ぎると、高所得者が納税先を海外に移してしまう。

このあたりは説明不要ですね。

納税者の流出は、税収が減るだけでなく、経済の停滞をも招きます。

 

・一定期間でなく「生涯所得」で見ると、公平とは言えない場合がある。

生涯所得が2億円の2人を比べてみましょう。

Aさん:課税対象額500万円✕40年のサラリーマン(現実的でないですが、40年間一定ということにします)

Bさん:課税対象額2億円✕1年のスポーツ選手(1年で引退、その後は無職とします)

 

所得税を簡単に計算すると

Aさん:税率20%、控除427,500円

(5,000,000円✕0.2ー427,500円)✕40年=22,900,000円

Bさん:税率40%、控除2,796,000円

(200,000,000円✕0.4ー2,796,000円)✕1年=77,204,000円

 

生涯所得は同じなのに、BさんはAさんよりも54,304,000円多い税負担を強いられます。

5000万円は、Bさんの所得の25%に相当する額です。

No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

 

・トーゴーサンピン、クロヨン問題

捕捉率の違いによる不公平。

現実はどうかわかりませんが、所得の捕捉率は

給与所得者10割、自営業者5割、農業所得者3割、政治家1割といわれています。

ひとことで言うと「サラリーマンばっかり税金取られる」。

所得を把握されやすい会社員はしっかり徴税されるのに対し、

自営業ではなんでも経費にしたり所得を少なく申請できる。

アングラビジネスの所得も把握することは困難です。

マイナンバー制度はこの問題が解消できる点を推してますね。

(その点は期待しますが、それにしても・・・言及は控えますが)

クロヨン - Wikipedia

上記のページでも、「対策」の項目に「納税者番号制度」と記述があります。

 

・正直者が馬鹿をみる?

Aさん:ビジネスを成功させ、社会を豊かにした高所得者

Bさん:資産家の家庭に生まれて、働かないで遊び暮らしている

Cさん:表では無職ということにしているが、違法なビジネスで大金を儲けている

この場合、Aさんは高い税率を負担させられるのに対し、BさんとCさんは所得税の負担はゼロです。(不労所得を考慮しない場合)

これが公平かといわれると、ちょっと違和感がありますね。

 

・課税対象は「働いている人」

不労所得も課税対象ではありますが、基本的には働く人に課税する制度です。

無職の人(学生、主婦、ニート、高齢者など)の負担はほとんどありません。

生き方や世代の違いで、税負担がかなり偏っているのです。

 

・累進課税は一見格差解消になりそうだが、実はそうでもない。

所得税の対象は「所得」のみ。

所得(フロー)に課税しても、資産(ストック)の格差は解消できない。

 

資産課税だとどうか?

格差を解消するためには資産に課税すればいいんじゃないの?

これまで資産を把握することは難しかったけど、マイナンバー制度で資産課税は現実味を帯びてきますね。

 

ところが資産に課税すると、貯蓄のモチベーションが下がってしまいます。

貯めるモチベーションが下がるから、稼いだお金の大半を消費にまわす。

そういう人もいるでしょう。

しかし、「じゃあ、必要な稼ぎ以上には、働かないほうがいいのかも?」

と考える人も出てくるのではないでしょうか。

(この考えは、税制とは関係なく増えていると感じますが) 

 

資産課税も所得税と同じく、労働意欲を下げる面があります。

資産の海外流出も招きます。(ピケティ提唱のグローバルな資産課税が実現すれば別ですが)

 

そして、資産課税は、早期に資産を築いてリタイアしようと考える人にとって不利な税制です。

もちろんかなりの資産がなければ対象にならないでしょうが、

先に例に挙げたスポーツ選手のような人が、多くの税負担を強いられるという点は変わりません。

 

「支出税」はどんな制度?

支出に課税したら、ますます消費しなくなっちゃうんじゃないの?

経済には逆効果なんじゃないの?

消費税とどう違うの?

 

支出税とは、「一定期間の消費」に対して課税する直接税。

課税ベースとなる消費額は、一定期間の所得から貯蓄を控除することで求めます。

【 1年間の消費額=1年間の所得ー1年間の貯蓄 】

※借金の返済は「消費」ではないので「貯蓄」に含みます。

 

所得はともかく、消費や貯蓄はどうやって把握するの?

 

そこで、マイナンバー制度ですね。

この恐ろしい(!)制度を利用すれば、支出税実現の大きな障壁は突破できます。

(それがいいか悪いかは別ですが・・・4000円還付するよりは遥かにまともな使い方だと思う。)

 

支出税は、

所得は「社会への貢献」で、

消費は「社会からの資産の持ち出し」であるという考えがベースになっています。

低消費であれば負担は軽く済みます。

所得でも、持っている資産でもなく、生活水準によって負担が決まるというイメージです。

低消費タイプのミニマリストには有利な印象を受けますね。

 

支出税のメリット

・税収アップ、負担軽減

課税対象者が広がることによる税収アップ。適切な税率が設定されれば、一人あたりの負担は軽くなる。

 

・世代間の負担が平等に

若年層や高齢者も対象になる。高齢化社会を支えるために現役世代にかかる過剰な負担を分散する。

 

・働き方による負担の不公平を解消

トーゴーサンピン問題の解消、また、把握が困難なアングラビジネスにも、いずれその所得が消費にまわってくることで課税できる。

 

・所得に偏りがある人への過剰な負担がない

スポーツ選手のように短期間で資産を築いても、支出をフラットにすれば過剰な負担はありません。

 

・アナウンスメント効果が出やすい

収入を自由に変えることは難しいけど、支出なら自分の裁量で変えられる範囲が多いですよね。したがって、増税、減税などの財政政策の効果が出やすいとされています。

 

・過剰に消費を控えることはしない。たぶん。

支出税では「貯めたお金もいつかは使う」と考えられています。

支出税も累進課税なので、消費を増やすと、税負担が重くなります。

だからといって、消費をしないで貯蓄にまわしても、いつかそれを使えば課税の対象になります。

合理的な消費者であれば、生涯にわたって支出を分散させ、フラットにする、と考えられているのです。

 

・逆進性の問題がない

消費税には、逆進性の問題(所得が低い人ほど負担が重くなる)がありますが、

支出税は直接税です。間接税である消費税とは違い、控除が可能です。

所得が低ければ控除を受けられる可能性が高い。

リタイアした人は、この恩恵を受けやすいですね。

 

現段階では机上の空論

まあ、支出税実現の可能性は現時点でかなり低いですし、

全部机上の空論なんですけどね。 

もちろん、支出税も完璧な税制ではないでしょう。

 

それと重要な点は、所得税その他の税の引き下げもしくは廃止とセットでなければただの増税だということ。

 

増税して還付金とか言うから事務コストがかさむ。

もっとシンプルにならないものだろうか。

政府は必要なことだけやればいい。「小さな政府」ですね。

 

それにしても、個人情報はどこまで把握されるんだろう・・・

別に困りはしないけど、閉塞感がすごい。

 

参考文献

支出税についてはこちらがわかりやすかったです。

平成19年発行で、マイナンバー制度の話は出てきませんが。

 

すっかりお茶の間のアイドルになられた、門倉貴史先生著です。