ミニマリストの小宇宙

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定額制音楽配信サービスは「音楽のTV化」?

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限りなく無料に近い有料、低料金の定額制

アップルの「Apple Music」、グーグルの「Google Play Music」などの登場で、定額制音楽配信サービス(サブスクリプション型音楽配信サービス)が盛り上がってきてますね。ソニーは早すぎたのでしょうか。

この流れについていろいろ見てみましたが、だいたい言われているのは、

・これからは音楽は所有するのではなくストリーミングで聞くのが主流になるだろう。

・アーティスト側も、全盛期のCDほどではないが現状よりは稼げる。

・まだラインナップは足りない。Youtubeに劣る。

 ということのようです。

 

定額制音楽配信サービスの料金体系はだいたい以下の3つに分類できそうです。

 

・定額

 「Apple Music」「Google Play Music」など

 

・2段階の定額

 「AWA」「LINE MUSIC」など

 

・フリーミアムモデル(無料でも使用可能&有料プランもあり)

 「Spotify」

 

ラインナップや使い勝手等、どのサービスがおすすめか、というのは様々な比較記事がありますのでここでは特に言及しません。好みですしね。

それよりも、私の感じていることについて書いてみます。

 

「これって音楽のTV化じゃない?」

 

定額制音楽配信サービスは「音楽のTV化」?

もちろんTVとは違う面もありますが、おすすめのプレイリストとか、ザッピングの雰囲気がありますね。TVの、とりあえずつけたらなんかやってる、みたいな感じと、似てませんか? 「何を聞いたらいいかわからない」人向けのサービスが充実しているので、どこまでも受動的なサービス利用が可能です。(まあ、Youtubeもそうだろって言われたら、そうなんですが。)そして、これが言いたいことなんですが、消費の仕方が間接的になる。 

 

TVにマツコ・デラックスが出てると見てしまう、という方も、マツコ氏へ直接お金を払うわけではありませんよね。彼(彼女かな?)はもともとコラムニストですし本なども出していますが、TVが活動の主です。彼(彼女)のファンは多くいますが、ほとんどがゼロ円ファン、ライトファンなのです。しかしマツコ氏は収入に困りません。ファンや視聴者が直接お金を払わなくても、TVの出演料があるからです。

「間接的」の意味、なんとなく伝わりましたか? 視聴者のマツコ氏への支持は、出演料や契約料という形で、間接的に支払われます。我々はお金を払わない。(とはいえ、TVをつけていても見ていなかったかもしれないし、マツコ氏ではなくゲストの俳優が目当てで見ていたかもしれません。そこまではわからないのですが。)

ミュージシャンの場合は、消費者が直接消費をします。(CDを買ったりライブに行ったり。)なんとなくTVを見る人はいても、なんとなくCDを買う人は少数だと想像できます。なんとなくクリスタルな時代ならばともかく、ふつう、CDはその曲やアーティストが好きだから買う。自分の欲しいものに対して、明確に「そのアーティストのCDに3000円払う」という消費をするのです。(実際アーティストに入るのは3000円のうちの一部ですが。)

サッカーが好きで、サッカーにはお金を使う、という人を考えてみましょう。試合を見に行ったり、グッズを買ったりすれば、それは当然サッカー界への経済貢献となるサッカー支持の意思表示です。しかし、サッカーを見るためにスカパーを契約したお金はどうでしょうか。サッカーの試合の視聴率に微々たる貢献をするかもしれませんが、その人が「サッカーが見たくてスカパーを契約した」ことは、アンケートでもない限りなかなかわかることではありません。

 

これと近いことになるのではないでしょうか?

 

「すべての音楽がパッケージ化され、それを低料金の定額で自由に利用できる」ようになれば、メジャー曲の再生回数は爆発的に増えるが、マイナー曲の再生回数は微増にとどまる、ということが予想されます。知名度が高く、広く浅い支持を受ける曲はライトファン、ライトユーザーによって再生回数が大幅に底上げされるのです。イベントや店舗のBGMとして利用したり、おすすめのプレイリストをなんとなく聞く層によって、「そのCDを買うほどじゃないけど、定額に含まれるなら聞く」という広く浅い支持を受け、雪だるま式に再生回数を得る。

 

一方、あまり知名度のないマイナー曲は主にそのアーティストのファンによって聞かれますが、その熱量は数字に表れません。なんとなく聞かれた1回と同じ1回。

CDの場合、価格が下がったり、景気がよくなると、広く浅い支持を受けるアーティストの売上は伸びる。コアファンを持つアーティストの売上は、価格の影響をあまり受けず、不況に強い。(投票率が下がると共産党の議席が増える、みたいなものです。)コアファンは多少高くても消費をするのです。行過ぎるとAKB商法みたいになってしまうのですが、ファンはそれだけの価値を感じて、「支払ってもいい」と思っているのです。パッケージ化で、この潜在的な消費を失うかもしれません。マイナーアーティストにとって死活問題です。(この消費のあり方は、AKBがメジャーになりすぎ&一部のファンがやりすぎなのでバッシング対象になりがちですが、適切な範囲であれば問題ないと思われます。ファンが少なくても成り立つのは、一人あたりの消費額が大きいからです。)

 

間接的な消費では、少数派の支持は過小評価される

マツコ氏の番組に無名の芸人が出演したとき、その芸人のファンがいくら番組を見たところで、それは「マツコ氏の人気」にカウントされてしまう。 

アーティストの評価がもし「再生回数」によって決まるならば、すでに知名度が高く、タイアップ曲などを多くもち広く浅い支持を受けるメジャーアーティストと、コアファンに支えられるマイナーアーティストとの格差はますます大きくなる。 

売り出したいアーティストを「おすすめ」表示するということもできそうだし、バックがついてるほうが有利、という点でYoutubeドリーム的なものはあまり期待できないのかもしれません。まあ、でも、それが世の常ですかね。

 

「低料金」は「違法な無料」を駆逐できるか?

無料から有料という流れによって、得られる収益もあります。

ライトファンも、小額なら払うかもしれない。

例えば、映画「THIS IS IT」を見て、マイケルジャクソンの曲を聴いてみようかな、と思ったとしましょう。 

・Youtubeで検索

・レンタル店で借りる

・CDやダウンロードで購入する

・持っている人に借りる

可能性が高そうな順に並べてみました。おそらくYoutubeが圧倒的ではないでしょうか。「ちょっと聴いてみようか」という程度では楽曲購入は高く感じますし、そもそもたくさんの曲があってどれがいいかわかりません。借りに行くのは、行動が伴いますし、これもまた、どれを選ぶかという問題があります。家にいながらYoutubeで検索すれば、人気の曲もわかるし誰かが作った再生リストもある。なによりタダで聴ける。こういう需要を、無料のYoutubeから低料金の有料サービスへ持って行く流れは、いいことだと思っています。 

もちろん、無料がすべて悪いわけではありません。「音楽を無料で聞くことは一切許さない」というのは行き過ぎですね。ただ、「ここから先は有料」というのがないと、バランスが崩れてしまうと思います。テイラー・スウィフトじゃないけど、「音楽はタダじゃない」。 音楽作品は本来対価を支払うべきものであり、タダで利用できるのは宣伝などの一部分に留めるのが良いのかもしれません。 

「低料金」という選択肢は、楽曲利用の金額が高すぎるために「違法な無料」を選んでしまう、というユーザーを減らす効果が期待できます。

アーティストに対価を支払いたくないわけじゃない、でも、「聞きたい音楽すべてに購入相当の金額を出すのは無理」だし、「タダで利用できるならそうしたい」。こんなふうに考えている人は少なくないと思います。そういう層を「定額制」に誘導できれば、違法な行為を減らしたり、現状の「無料が当たり前」というアンバランスを解消できるかもしれません。

 

音楽の公共財化? 音楽は誰のもの? 

これからは音楽も「シェア」する時代らしいので、TV化というかNHK化、公共財化ですね。利用料を払って公共財となった音楽を聴く。なんかそれもどうなんだろう・・・配信サービス側と揉めて排除されるアーティストなんかが出てきたら、ちょっと問題ですよね。無料サービスの場合は広告が入りますから、そのあたりでアーティストの表現に規制がかかったり、自粛したりするかもしれません。考えすぎでしょうか。(シェアという言葉は、友人におすすめしたり、自分の作ったプレイリストを公開したり、というニュアンスで使われているようですが。)

CDはなくして、全部ダウンロードでいいじゃん、と思っていましたが、「世の中にCDは残したほうがいいかも」という気持ちになってきました。CDも、ダウンロードも、ストリーミングも、それぞれの短所を補完しながら共存していくのがいいのかもしれませんね。

 

ユーザー側にはメリットが多い & 新しい市場の可能性

いろいろ書きましたが、定額制音楽配信サービスは、ユーザーにとってはかなりメリットの多いものだと思います。CDからダウンロードへ、という流れのときは若者がメインでしたが、定額制は中高年や高齢者にもかなり訴求力があると思います。通販なんかで、「なつかしの歌謡曲」みたいなCDセットが売られていますよね。あの需要を取り込めます。50年代、60年代などのプレイリストや、80年代アイドル、演歌、などのキーワードをアピールすれば、暇をもてあましている高齢者などは、ついていけなくなったTVの代わりに一日中聞いていられるかもしれません。(そういう意味でも、TV化といえるかも? CDやカセットは持っているものの中から自分で選んで再生しますが、このサービスだと勧められるまま無限に聴き続けられる。かなりTVに近い、受動的な娯楽。それでいて好みのものをレコメンドしてくるのだからTVより夢中になるかも。)

 

私はまだ様子見です。契約サービスはあまり増やしたくないのです。

 

参考:なぜ音楽は定額制配信へ向かうのか(榎本幹朗) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

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