- 1円の価値は万人に等しいか?
- 消費は「投票」だが、「普通選挙」ではない
- 自分目線か、他人目線か
- 「美人投票」とは
- 「美人投票」的な消費
- 消費は投票、の疑問点
- 1円の格差は、1票の格差どころではないから
1円の価値は万人に等しいか?
1円で何が買えるか、は、誰の1円であろうとみな同じだ。(同じ時点においては。)
しかし個人にとっての1円の価値は同じではない。個人が1円に感じる価値は、持っている資産や収入や支出に対する割合はもちろん、「どれだけお金を重視するか」という価値観によっても変わる。
消費は「投票」だが、「普通選挙」ではない
持っている票の数が違う。AKBの選挙と同じく、「お金を持っている人、使ってくれる人」の意見を尊重する選挙である。ある意味合理的であるが、歪みも生む。
たとえば、AKBのAさんは誰からも愛されて幅広い層に人気があるとする。しかしライトファンばかりなのでCDは買わなかったり、買うとしても1枚しか買わない。
Kさんは一部のファンから絶大な人気があり、KさんのファンはCDを買えるだけ買う。
Bさんはあまり人気がないが、Bさんの家は資産家で、Bさんに投票するためCDを1000万枚買った。
この選挙でBさんがもっとも票を集めることは、「Bさんが一番人気がある」ということを意味しない。人気投票として見るならば、適切とはいえないだろう。
仮に1人1票であればAさんの圧勝、投票率が下がるにつれKさんが肉迫していくという展開が予想される。
多数派の意見を聞くならAさん、ステークホルダー(ここでは、お金を落とすファン)の意見を聞くならKさん、一部の特権階級の意見を聞くならBさん、というイメージだ。
多数派/ステークホルダー/特権階級、は、
ハコモノはいらない国民、仕事が欲しいゼネコン、地元にハコモノを作りたい有力者、みたいなイメージに置きかえてもいい。
消費は「格差選挙」。「お金を持っている人、使ってくれる人」の意見を偏重する選挙である。
自分目線か、他人目線か
私は今、1000円の財布を使っている。
とりあえずのつもりだったが特に問題がないのでそのまま使っている。
しかし、「まわりはみんな数万円の財布を使っているし、社会人ならそれぐらいのものを持つべきかな」というような、自分の感覚より、人の目、常識や世間体を優先する消費というのは少なくないだろう。
「みんな持っているから」「社会人ならそれぐらいのものを持つべきかな」という消費は、「美人投票」に近いものがある。
「美人投票」とは
美人コンテストで、自分が 「この人は美人だな」と思う人に投票するのではなく、「みんなはこの人が美人だというだろうな」と思う人に投票する方法だ。
この方法では、「自分が美人だと思う人」で投票を行ったときとは異なる結果になる場合がある。
AKBの選挙は美人投票ではない。昔、「どっちの料理ショー(※)」というTV番組があったが、あれが美人投票。株式市場も美人投票の例としてよく挙げられる。
(※)2人のシェフがそれぞれ料理を作ってプレゼンし、出演者はどちらが食べたいかを投票する。多数派を選んだ人はその料理が食べられるが、少数派を選んだ人は何も食べられない。よって出演者は、「自分がどちらを食べたいか」ではなく、「どちらが人気を集めるか」を予想して投票する、という行動をとる。
「美人投票」的な消費
例えば洋服を選ぶ際、年齢などで着たい服をあきらめて、無難な服を買うこと。
流行っているからというだけで流行の服を買うこと。
その服が好みだったり、気に入ったからという「自分が着たいから」という理由ではなく、好感を持たれそう、仕事ができるように見えそう、信頼されそう、おしゃれに思われそう、など、自分ではなく「他人から見て」この服をいいと思うだろうなというものを選ぶ消費は、ある意味「美人投票」ではないだろうか。
自分の着たい服ではなく、世間で望まれる服、「着るべき」とされているであろう服を選んでいるのだ。
これらの消費の満足度は低い。自分の欲求に基づくものではないからだ。
美人投票的な消費がある以上、売れていることをもって純粋に「消費者の望むもの」であるということはできない。
消費は投票、の疑問点
消費を投票と言いきってしまうには、
・持っている票の数が違う「格差選挙」である
・自分の好みや欲求に基づくものではない「美人投票」がかなりの割合混じっている
という点から疑問がある。
さらに、
・欲しいものがなければ投票できない
・欲しいものが高額だと投票できない
という問題もある。売っていないものを買うことはできない。
(前者は、政治の選挙でもいえることですね。投票したい候補者がいないという。)
1円の格差は、1票の格差どころではないから
他人目線の「美人投票」ではなく、「自分の好みや価値観に基づく投票」。
ちゃんと考えて、有意義に投票したいものです。