ミニマリストの小宇宙

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ミニマリストの小宇宙

minimalist's microcosm

「命を救った道具たち」―探検家の45の道具と知恵

 

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ロシアのアムール河で突然、乗っていた船が壊れた。その時、わたしがバックパックの中から取り出したものとは――。ロビンソン・クルーソーの家を発見した探検家・高橋大輔が命を保つために使い続けてきた道具たちと探検世界を語りつくす。

探検家・高橋大輔さんの著書です。

高橋さん曰く、「探検は、何かを探して検証すること」。探検と冒険は全く違うものなのだそう。

 

必要なものを持っていなければ命に関わるけれど、重く大きな荷物を抱えては身動きがとれない。探検家にとって道具の厳選は必然です。こちらの本では、選びぬかれた探検道具の中でも、命や精神を救った道具たちを中心に紹介されています。

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調理器具でありながら、食器でもある。

(No.34 シエラカップ)

 

高城剛さんの「LIFE PACKING」のような感じで、ひとつひとつの道具を取り上げてそれぞれについての説明があります。単なる道具紹介には終わらず、その道具が探検でどう活躍するかや、それに助けられたエピソードなどがあり、探検エッセイとしても楽しめます。シェラカップの章では簡単なアウトドア料理が紹介されていて、わたしも「あつあつ卵焼きスープ」や「アンチョビのクスクス地中海風」を作ってみたくなりました。「物語を旅する」というテーマで探検をしている高橋さんらしく、道具のひとつひとつに物語を感じさせます。

水の衛生剤や衛星携帯電話など探検家ならではの特殊なアイテムから、ジップロックなどの身近な日用品まで。「これはこんな風に使える」と想定して持っていたというよりも、危機が訪れたときに、「手持ちのもので工夫してなんとかした」というエピソードが多いのが印象的です。

生死の堺をさまよう局面では、道具があるかどうかというよりも、身の回りのものをいかに利用できるかが重要な鍵となる。

実際のサバイバルには用意周到さより、創意工夫のほうが求められる。

(No.10 釘)

 

又鬼山刀1本で藪を切り開き、打ちとった鴨を捌く。

熱が出たときは、ジップロックに水を入れ、水まくらとして使う。

アナログ時計は簡易の方位磁針となる。

いちばん多用途なのはシャワーキャップ。高橋さんは探検のときにはいつも、ホテルのアメニティのシャワーキャップをポケットに入れているのだそうです。カメラや携帯電話の防水のほか、食品のラップ代わりや捕虫網代わり、木の実の採集などの袋として、非常時にはマスクとしても使えるとのこと。いつもホテルではその存在をスルーしているシャワーキャップへの見方が変わりました。シャワーキャップは「口がゴムになっている透明な袋」なので、発想を変えればその使い道は様々に広がります。

自分の持ち物で考えてみると、ワセリンや手ぬぐいがひとつでいろいろな用途に使えます。ワセリンはただの油ですし、手ぬぐいはただの布です。道具は「多機能」をうたったものよりもシンプルなものの方が融通が利くのかもしれません。

持ちものをシンプルにすること・かばんの中身と「鞄の中身」

 

高橋さんが探検に持っていくものは、サバイバル道具だけではありません。 余計なものを持っていけば荷物になるのに、それでも持っていくものがある。ものを減らしても、それでも残る「生存に絶対不可欠ではないけれど精神的に必要なもの」がある。これは高城剛さんの持ち物からも感じることです。

探検のための道具は、命を救うものであるばかりか、心を支えるものでもあるということだ。

箸袋や古銭などは、それ自体が生存に役立つわけではないけれど、厳しい探検の中で高橋さんに勇気を与えてくれる大切な存在です。

 

電話は通じても結局、漂流者は漂流者らしく自力で脱出しなければならない。わたしは文明の利器の限界を悟った。同時に、難局を乗り切るのは機械ではなく人間なのだと覚悟を決めた。

(No.4 イリジウム衛星携帯電話)

どんな道具を使っても、最後に頼れるのは自分自身。もしかすると、最後に生死を分けるのは助けを求める携帯電話ではなく、「心の支えとなるもの」なのかもしれません。

 

内容はもちろん、使い込まれた道具を見ているだけでも楽しい1冊。

探検の予定はなくとも、日常や旅行の参考になる部分が多くありました。