minimalist's microcosm

ミニマリストの小宇宙

アノマロカリス と 西加奈子

 

 

 

第一印象が大切だ

 

なんていうことは

もううんざりするくらいに聞く言葉ですが

あらためて実感したという話です

 

最近 西加奈子さんの本を読みました

今更ですが初めて読んだんです

 

 

非常に面白くて一気に読みました

とても「読ませる」作品でした

  

すっかり感服して

これは他の作品も読まなければ 

となりました

 

2冊目も期待を裏切らず

 

しかし問題は3冊目です

これまで読んだ2冊と比べると「読ませる」ものではありません

「自分で字を追って読まなければいけない」本でした

 

そのときに思ったのです

もし これを一冊目に選んでいたら

西加奈子さんへの印象は全く違ったのではないかと

 

「さすが騒がれているだけのことはある、他の作品も読まなければ」

となったのは

たまたま私が一冊目に自分好みの作品を引き当てたからであって

 

もし最初に選んだのが別の本だったら

「ああ西加奈子ね、人気あるよね、一応読んだけど、もういいかな」

と わかったような気になって

他の作品は読まずに過ごしてしまったのではないかと

これってすごくもったいないと同時に

いかにこういうもったいないことが 簡単に起こるかっていうことですよね

 

おそらくこれまでにも似たようなことは起こっていて

第一印象で判断して

良い作品と出会う機会を逸したことは少なからずあっただろうと思います

 

たまたま私が読んだ西加奈子さんの2冊っていうのは

被ってるテーマと言うか何と言うかそういうのがあって

要は「全部で自分」みたいなことで

他人からは自分の一部しか見えなくて親しくなるにつれてだんだん見える面が大きくなって全部に近づいていくっていうことだったり 外見と中身と全部合わせて自分なんだっていうこと だったりなんですけど

本を一冊読むということでその作家を評することは とても 危険ですよね

第一印象はもちろん大事だし 本を一冊書くっていうことはそこに相当注ぎ込まれてますから 得られる情報は多いはずです

それでも それはその人のほんの一部にしか過ぎない

たとえ作品を全部読んだところでそれはその人の一部でしかないんです

 

ブログにもそういうことが言えて

私が誰かのブログを読む時 誰かが私のブログを読む時にもこういうことが起きている

たまたま読んだ記事がすごく琴線に触れて

この人の書いたものが もっと読みたい となることもあれば

実は自分と価値観が近かったり自分にとって有意義な事を書いているブログであったとしても

たまたま最初に見た記事が 自分にとってさほど興味のないものだったら

他の記事を読もうっていう風にはならなくて もう閉じちゃうと思うんです

 

いろんな面を持っている物のある一部分を最初に見るんですよね

たまたま最初に見たところが どうかっていうことで全体を評価しちゃう

その一部っていうのは全体の縮図ではないんですよ

すごく偏ってるんです

全体の中に全くない要素っていうのはもちろん含まれないですけれど

全体の中にほんのわずかだけ含まれている要素を

たまたまその部分だけを見てしまった場合っていうのは

その一部から全体を推測することは ほとんど不可能に近いんです

 

化石とかを考えてみると分かりやすいと思うんですけど

一部分だけ発掘された化石っていうのは その動物の小さい形をしているわけじゃなくて

しっぽの先だけとか なんですよ

それが尻尾かどうかっていうのもわかんないですしね

だからアノマロカリスはずっとでかいエビだと思われてたんですよ

それはエビの尻尾みたいなものだけが見つかったからであって

このエビの尻尾みたいな物っていうのは アノマロカリスの縮図ではなくアノマロカリスの一部で

一部から全体を推測した結果がエビだということですよね 

 

 Anomalocaris BW.jpg

アノマロカリス - Wikipedia

 

これが最初に見つかったのがエビみたいじゃない部分だったら

一部から作り上げられた全体の推測っていうのはエビにはならなかったはずです

アノマロカリスの正しい姿をしているかどうかは別にしても エビではなかった

これが一部から全体を推測するということの難しさです

 

だからといって 面白くなかった作家の別の本を読もうとか

明らかに趣味じゃないブログの他の記事を読もうとかいう風にはなかなか思えないですよね

時間も有限だし そんなことをするほど暇じゃないですよ

だけどそういう時にもしかしたらすごく面白いものを逃しているのかもしれないです

自分がエビだと判断したものが 実はアノマロカリスかもしれないんです

 

ここで重要なのは 自分はエビは知っているけれどアノマロカリスは知らないということです

今でこそアノマロカリスがどんなものかわかってますけど

その時点では全く未知のものなんですよ

誰も見たことがないから これはアノマロカリスだっていう風には多分分からないんです

だからこそエビだと早合点したわけですが

 

私が3冊目に読んだ西加奈子さんの作品(作品名は書きません)は

私にとってはあまり夢中になれるものではなかった

もちろん ある本が面白くなかったっていうのは 一人の読者の一つの意見であって

私がこう言ってるからじゃあ別に読まなくてもいい本なんだって思うことも また同じ現象なんですよね

たまたま最初に見た評価が私の評価だったっていうことでそう思っちゃうっていうことがあるとすれば

それはまさにこの記事で私が言っていることそのものです

 

やはり第一印象というのは大事で

それは自分がどう見られるかということだけでなくて

自分がどう見るか ということにも大いに関係のある話

だということです