- 軽減税率とは?
- 軽減税率推進派の意見
- 軽減税率反対派の意見
- 軽減税率は低所得者対策になるか?
- 「低所得者対策」になる税率は?
- 軽減税率の導入コスト
- 「ヨーロッパ諸国は低所得者対策として軽減税率を導入している」説の2つの誤解
- 日本とヨーロッパではそもそも税制が違う
- 対象の線引き問題
- 対象を広げることについて
- 「国民は賛成している」について
- まとめ
軽減税率とは?
標準税率より低く抑えられた税率のこと。
本来の軽減税率
「現在の8%の標準税率から、特定の品目を5%に軽減する」というのが軽減税率の本来の考え方です。(もちろん5%でなくてもいいです。現状より低い税率であれば。)
日本がやろうとしてるのは「軽減税率」というより「加重税率」
今の日本で話題になっている政策としての軽減税率は、
「消費税を10%に引き上げる際、食料品など一部の品目については消費税を8%に据え置く」というものです。
「軽減」って言ってるけど、現状から減らしてくれるわけじゃないんですね。
増税とパッケージにしてしまっているので、言葉は「軽減」なのに実際は増税という不思議なことになっています。
「軽減」というとイメージがいい、というのも問題。現在は税率8%ですから、食品以外を10%に増税する「加重税率」とでも言い換えたほうが実情に合っています。国民の支持は得られそうにないですが。
軽減税率推進派の意見
・低所得者対策になる。
・ヨーロッパ諸国は軽減税率を導入している。
・国民も賛成している。
・約束は守らないとね!
(・だから、増税してもいいよね?)
軽減税率反対派の意見
・低所得者対策にはならない。(効果が薄い、もしくは逆効果。)
・ヨーロッパ諸国とは歴史も会計方式も違う。
・費用対効果が低い。民間の負担が大きい。
・経済をゆがめる。(抱き合わせ商品など。)
・政治に利用される。(特定の業界を優遇するなど。)
軽減税率は低所得者対策になるか?
エンゲル係数
この根拠としてエンゲル係数がよく用いられる。
エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める飲食費の割合のこと。
一般に、エンゲル係数の値が高いほど生活水準は低いとされる。これは、食費(食糧・水など)は生命維持の関係から(嗜好品に比べて)極端な節約が困難とされるため
エンゲル係数の高低は生活水準を表す指標となっている
家計における食費の割合は、高所得者ほど低く、低所得者ほど高い。ただし、「家計」ベースで見ている点は注意が必要。年収1000万円の5人家族と、年収500万円の2人暮らしを単純に比較することはできない。
「低所得者」とは
あまりいい言葉ではないですが説明上使います。政府のいう「低所得者」とは「住民税非課税世帯」のことです。(繰り返しますが、言葉の定義上の話です。かっこ付きで。)
「低所得者対策」とは
「低所得者対策」の意味するところは、「お金持ちと庶民の間の再分配、格差是正」というより、セーフティネットに近いのです。だから、軽減税率ぐらいでは、対策として不十分です。生活保護とか、給付金とか、住宅補助とか、もっと効率のいい方法で行うべきものです。
「軽減税率」に「低所得者対策」としての効果はあるか?
散々コストをかけて軽減税率を導入しても、消費税2%分ぐらいで、そのような人々の生活が大幅に改善するとは思えません。そもそも、軽減税率は言葉こそ「軽減」ですが、一部を据え置きで増税するということなので、負担は一切軽くなっていないのです。10%にあがった分、むしろ増えるんです。これが「低所得者対策」でしょうか? 「エンゲル係数」などともっともらしいことを言われても、鵜呑みにしてはいけませんね。ちょっと計算してみましょう。
Aさん:食費が月 4万円、年収 300万円、年間支出 200万円の世帯
エンゲル係数 24% ( 40,000 ✕ 12 ÷ 2,000,000 ✕ 100 )
食費にかかる消費税 年間 38,400円 ( 40,000 ✕ 0.08 ✕ 12 )
軽減効果 年間 9,600円 ( 40,000 ✕ 0.02 ✕ 12 )
軽減効果の所得に対する割合 0.32% ( 9,600 ÷ 3,000,000 ✕ 100 )
食費以外の支出にかかる消費税の増加額 年間 30,400円 ( 1,520,000 ✕ 0.02 )
Bさん:食費が月18万円、年収2000万円、年間支出1000万円の世帯
エンゲル係数 21.6% ( 180,000 ✕ 12 ÷ 10,000,000 ✕ 100 )
食費にかかる消費税 年間 172,800円 ( 180,000 ✕ 0.08 ✕ 12 )
軽減効果 年間 43,200円 ( 180,000 ✕ 0.02 ✕ 12 )
軽減効果の所得に対する割合 0.21% ( 43,200 ÷ 20,000,000 ✕ 100 )
食費以外の支出にかかる消費税の増加額 年間 156,800円 ( 7,840,000 ✕ 0.02 )
※エンゲル係数は22~25%ぐらいが平均的な数値
※標準税率10%、食品のみ8%の軽減税率を想定。
上記の計算だけでも、「低所得者対策」からはむしろ逆行する制度だといえます。
絶対額で見れば軽減効果が高いのは高額の消費をする世帯です。政府の説明と反対ですね。消費税の逆進性は、「低所得者は所得に対して税の負担が大きい」のであって、絶対額で負担が大きいわけではない。軽減の場合も理屈は同じです。
「相対的な負担感をなくす」というふわふわした言葉で語られていますが、要するに、絶対額で見た場合、低所得者はむしろ軽減効果を得られないということなんです。
もちろん、すべての品目を10%に増税する場合と比較すると、軽減税率を導入したほうが、Aさんの支払う消費税は96,000円軽くなります。増税を前提とするならば、「低所得者の負担を軽減する」のは事実です。しかし、この恩恵はすべての消費者が受けられます。特に低所得者を優遇するような制度ではないのです。エンゲル係数が高い人ほど負担軽減、というのは、2000万円に対しての43,200円より、300万円に対しての9,600円のほうが大きいから、負担が軽いのだという論法です。(そもそも、低所得者に対して、「あなたの収入に対して大きい額だから小額でも負担軽減効果が高いのだ」などというのは欺瞞です。)
また、増税をしない場合と比べると、Aさんは年間30,400円多く消費税を支払うことになります。これを「低所得者対策」とうたうのはいささか不適切なように感じますね。
「低所得者対策」になる税率は?
「増税してもAさんの負担はむしろ減る」という制度を設計すると、10%の標準税率に対して食品は1.6%まで軽減する必要があります。
Aさんの現状(8%)の支払消費税 年間 160,000円 ( 2,000,000 ✕ 0.08 )
上記税率での支払い消費税 年間 159,680円( 480,000 ✕ 0.016 + 1,520,000 ✕ 0.1 )
同じ税率をBさんに適用すると、Bさんの場合は支払い消費税が増えます。
Bさんの現状(8%)の支払消費税 年間 800,000円 ( 10,000,000 ✕ 0.08 )
上記税率での支払い消費税 年間 818,560円( 2,160,000 ✕ 0.016 + 7,840,000 ✕ 0.1 )
さらに、政府の税収も増えています。
現状(8%)の場合 960,000円 ( 160,000 + 800,000 )
上記税率(1.6%、10%)の場合 978,240円 ( 159,680 + 818,560 )
食品を非課税や非課税に近い低税率にするような軽減なら、低所得者対策といえそうです。そして、食品を1.6%まで減税したにもかかわらず、税収は増えていますね。
もうすこし現実的にしてみましょう。
Aさんが8人、Bさんが2人の世界だったら、税収は?
現状(8%)の場合 2,880,000円 ( 160,000 ✕ 8 + 800,000 ✕ 2 )
上記税率(1.6%、10%)の場合 2,914,560円 ( 159,680 ✕ 8 + 818,560 ✕ 2 )
Aさんの割合が多くても税収は増えています。 税率しだいでは、税収アップと低所得者の負担軽減の両方が実現できるかもしれません。このモデルは単純すぎるので(税率が変わったのに2人とも消費行動を全く変えていないのです)、適切な税率は、もっとちゃんとした人に、実際の統計に基づいて計算していただきたいですね。(もちろん、これだけをもって「低所得者対策」とするのは不十分ですが。)
軽減税率の導入コスト
事務コスト
単に増税するだけでも、メニューコストや会計業務の増大など、大きなコストがかかりますが、軽減税率を導入するとなれば、レジや商品管理システム、経理システムの総入れ替えなども必要になるかもしれません。複数税率に対応するため、研修や教育を行ったり、人員を増やす場合もあるでしょう。これらはすべて民間企業の負担です。(システムを作る企業や、経理の業務委託、セミナーなど、裏を返せば、ビジネスチャンスでもある。ただ、実際は現場の負担が重くなるだけかも。零細企業には辛い。)
政治的なコスト
想像ですが、利害関係の調整は難しそうですね。また、アナウンスメントや配布物の作成などにもコストがかかりそうです。
コスト以上の効果はあるの?
こういうときこそコスパ大事です。私にこれを試算する能力はありませんが。
「ヨーロッパ諸国は低所得者対策として軽減税率を導入している」説の2つの誤解
①そもそも低所得者対策ではない
②そもそも「導入」したわけではない
まず、ヨーロッパ諸国における軽減税率は低所得者対策を主目的とはしていません。フランスではキャビアが20%の標準税率、フォアグラやトリュフは5.5%の軽減税率となっています。ともに高級食材ですが、フォアグラやトリュフは国内産業を保護する目的で軽減税率を適用し、キャビアは高級品かつ輸入品であるため標準税率としているよう。
低所得者対策が主目的であれば、フォアグラやトリュフも高級品なので標準税率になりそうですよね? どちらかというと「産業政策」としての意味合いが強いみたいです。
そして、統一税率からの変更で「軽減税率が導入」されたわけではなく、もともとそれぞれの商品に異なる税率の「物品税」がかかっていたのを、税の名目を「消費税」として統一した、という見方が正しいようです。その名残で税率が違うのだそう。バラバラの税率を統一するのにも、莫大なコストがかかります。政治的な困難もある。それができなかったから現在の状態になっているのであって、本当は日本みたいに一律にしたかったのでは、という人もいます。
日本とヨーロッパではそもそも税制が違う
日本のような「請求書等保存方式」では、複数税率の運用はとても難しいのだそう。軽減税率を本気で導入するなら、ヨーロッパのような「インボイス方式」に変える必要がある、という専門家もいます。しかし、これを変えるのってものすごいことですよね? ちょっと想像を絶するくらい大変だと思います・・・
「ヨーロッパでは軽減税率を導入しているのだから日本でもできるはずだ」という意見もよく聞きますが、そもそも事情が違うのでそう簡単ではないようです。
追記:インボイス導入するみたいです。
政府・与党は16日、生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」を導入する際の事業者の経理方式について、当初は事務負担が少ない現行の請求書をベースにした簡易方式とする案を軸に検討に入った。商品ごとに異なる税率と税額を細かく記す「インボイス(税額票)」方式は、中小・零細企業に配慮すると2017年4月の消費税率の再引き上げに間に合わないとの見方から、数年後をめどに導入する方向で調整する。
自民税調 軽減税率、還付案は撤回 増税時の簡易方式を検討 (SankeiBiz) - Yahoo!ニュース
対象の線引き問題
「酒類を除く飲食料品と新聞、出版物」が案のようです。まず食品について考えてみましょう。
人間が食事で摂取する物。
医療を目的としたものは薬とよび、食品と区別される事が多いが、薬とは定義されない健康食品と呼ばれるものもある。
生物は食品を味わうことは快楽になるので、嗜好品としての要素もある。
「すべての食品」を対象にすべき?
食品といっても、外食や高級食材、バレンタインのチョコレートやお中元のような贈答品まで、生きるのに最低限必要な食品以外にもいろいろありますね。交際費としての側面を持つ場合も多いです。
外食は除く?
忙しい会社員がファストフードで昼食をすませるのが「外食」で、高所得世帯で専業主婦の奥さまがお取り寄せの高級食材を使って料理するのが「自炊」だとしたら、「外食か否か」という区分が必ずしも適切というわけではなさそうです。
贅沢な食事やお菓子も対象にすべきか?
どこまでが贅沢品かはすごく難しいです。米は一般食品で、お菓子は贅沢品、などとしても、高級ブランド米より50円の駄菓子のほうが税率が高かったら違和感ありますよね?
基準より高かったら贅沢品とする?
かといって、すべての品目に対して基準の価格を決めるのは不可能です。ずっと同じ基準というわけにもいかないし、これまでにない商品がどんどん市場に出てくるのに対応できるとは思えません。仮に芝エビは10%、バナメイエビは8%とかだったら・・・大混乱ですね。逆の偽装が起こったりしたらそれこそ笑われてしまいます。
価格は変動する
もし芝エビが大漁で価格が下がったとしても、いちいち 10% にしたり 8% にしたりするわけにいきません。
ウサギはなぜ一羽か?
かつて獣肉を食べることが禁止された際、鳥であれば食べるのを許されたため、ウサギを鳥に見立てて「一羽」と数えたそうです。何かを優遇するルールは、いろんな抜け道を探るインセンティブを与えてしまいます。芝エビのパックにバナメイエビを一匹入れたら税率はどうするべき? 半分ずつだったら? すり身にして混ぜたら?
第三のチョコレート問題
フランスでは、チョコレートはカカオの含有率で税率が違うみたいです。これは日本の酒税に似てますね。第三のビールみたいなことになりそうです。原材料の割合で税率を変えるのは問題が多いです。もし、カカオ50%未満なら安い税率を適用する、というルールのもと、カカオ49%の商品を開発しても、政府がある日「やっぱり40%未満にします」とルールを変更すれば税の優遇は受けられないし、これまでかかった開発費は政府が負担してくれるわけではありません。また、原材料の割合は見た目では判断できないというモラルハザードも発生します。
適切な線引きは難しい。贅沢な食品も対象となることには多少目をつぶって、すべての食品を対象とするほうがよさそうです。おまけ付食品などの「抱き合わせ」については後述。
では、「新聞、出版物」は対象にすべきでしょうか?
新聞は、事件、事故や政治や経済や芸能やスポーツや国際情勢などの動向などのニュースを報じるためのメディアで、記事文章や写真、図面などが紙(新聞紙)に印刷され綴じていないものである。
出版とは、販売・頒布する目的で文書や図画を複製し、これを書籍や雑誌の形態で発行すること
書籍や雑誌など出版されたものを出版物と呼び
出版(複製)は一般に印刷によって行われる。新聞も同様の方法で発行されるが、流通経路が異なり、普通は出版とは呼ばない。
「新聞」は「出版物」ではないので、「新聞、出版物」としているのですね。
なぜ出版物だけ優遇するのか?
日本書籍出版協会より
食料品が身体の糧であるように、出版物は心の糧となるものです。しかし、命に直結するものではないため、消費税率引き上げに伴い、低所得者になるにつれて買い控えが起こります。本は人生を豊かにするが、本で学ばないと学力や所得の格差が広がり、ひいては国際競争力にも影響してきます。2014年に消費税は5%から8%に引き上げられましたが、2014年の出版物の売り上げは、過去最大の落ち込みとなりました(前年比4.5%減の1兆6065億円)。2017年4月に消費税が10%に引き上げられるに際して、すべての出版物に標準税率が適用された場合、より一層の落ち込みが懸念されます。
本は人生を豊かにする。でも、本だけがすばらしいわけじゃない。習い事や旅行やペットを飼うことは? 映画や音楽は? 教育上有益なものをあげればキリがない。
「本で学ばないと学力や所得の格差が広がり」とあるが、学ぶ方法を「本」だけに限定する必要はないし、本を買うことができなくても図書館を利用すれば本を読むことはできる。そういう施設や仕組みを充実させることもひとつの方法だ。
また、2014年の出版物の売上の落ち込みは増税が要因かもしれませんが、出版物の売り上げは税制とは関係なく減少傾向にあります。本が売れないのは増税だけが原因でしょうか? (もしかして、電子は含まないとか? 電子を含んだとしても、仮に同じ冊数が売れた場合、電子は紙の本より少しだけ安いので「売上」は目減りします。)
そもそも出版物は「再販売価格維持制度」によって小売店での定価販売が保証されており、すでに手厚い優遇を受けています。消費者が本の買い控えをするかどうかは、2%の税よりも本の価格そのものの要素が大きいのではないでしょうか。
「すべての出版物」を対象にすべき?
本といっても、学術的なものから娯楽小説、漫画、雑誌、写真集、成人誌、など多岐にわたります。すべての本ではなく、有益な本だけを対象にしようとして、「教育的な本」などという意味不明な区分を政府が作りかねないのも心配ですね。どんな本から何を得るかは人によります。この本は有益、などと決めること自体、本の読み方、とらえ方を限定してしまいます。 名作を読んでも何も感じないこともあるし、漫画を読んで医者を志す人もいます。
電子やオーディオブックは?
オーディオブックはさすがに対象外じゃないの? と思われるかもしれませんが、もし、オーディオブックが軽減税率の対象にならないのなら、視覚障害者が本を読む権利を軽視していることになりかねません。線引きはかなりデリケートな問題を含みます。(オーディオブックの利用は視覚障害者に限らないのですが。)また、拡大やフォントの変更が可能な電子書籍は、弱視者や視力の衰えた高齢者の読書の助けになっているようです。紙の本とそれ以外を分けるべきではないのかもしれません。
古本は?
古本については軽減税率を求めていないようです。古本は対象外でも別にいいのですが、先ほどの引用をすると、「低所得者になるにつれて買い控え」が起こるのですよね? 低所得者は売価の安い古本を利用する可能性が高いのではないでしょうか?低所得者を引き合いに出すのはやめて、素直に「出版業界を守るため」と訴えてはいかがでしょうか。出版業界を守りたいというのは、別に後ろめたいことではないと思いますよ。利権でなく、文化を守る目的であれば。(再販売価格維持制度で現状でもかなり守られているのですが。)
抱き合わせはどこまで認める?
そもそも、日本で流行した「付録付き雑誌」は、本の税率が低いヨーロッパの「抱き合わせ商品」を参考にしたものだそう。抱き合わせが認められるのなら、本とセットにすればあらゆる商品が軽減税率の適用対象となります。
景品規制では,77年に懸賞によらない景品類の提供(総付け景品)を,取引価格の10分の1の金額(1000円未満の場合は100円)としたが,2007年(平成19)3月に取引価格の10分の2の金額(1000円未満の場合は200円)と改正した。
現状では、取引価格の10分の2の金額までの「景品」が認められるよう。10万円の商品に「出版物」をつけて、「10万円の本に原価2万円の景品をつけた」と主張すれば、10万円の本として販売が可能になるのでしょうか? ここまで来るとさすがに指導されそうですが。高額商品になるほど税も大きくなりますから、このようなことを行うインセンティブは十分あります。(ただし、消費者にこのルールが浸透すれば、本をつけることは原価が安いとわざわざいっているようなものなのですが。)
対象を広げることについて
利権争いの温床となる?
線引きは政治的な問題でもあります。
消費税軽減税率の対象品目選定に各業界が「オレもオレもの大合唱」 | ハーバービジネスオンライン
どの業界も、自分たちの扱う商品を軽減税率の対象にしてほしい。政府に「軽減税率の対象にする」というカードを与えることになり、業界団体に対する力は強くなりそうです。天下り先が増えるとの指摘も。
選挙の票集めに利用される?
おむつを対象にして欲しいという女性がいた。言いたいことはわかる。しかし冷静に考えて欲しい。2%の消費税免除、その程度で、「おむつを対象にすれば子育て世代の支持が得られるのだな」と思われてしまいますよ。「育児の必需品を軽減税率の対象にして欲しい」という要望があったとしても、それさえ行えば問題が解決するわけではない。その人は本当は何を望んでいるのか。育児支援なのか、子どもがいても働ける環境なのか、所得の向上なのか。枝葉ではなく、大枠で考えるべきだ。
子育て支援が目的なら、育児用品の2%減税より、もっといい方法がいくらでもあるだろう。育児用品の軽減税率適用は、「育児支援をやるつもりがある」というアピール効果がある。しかしこれはむしろ政府の利益である。
2%の差額に、いろいろな目的を負わせるのは無理がある。 諸問題については、軽減税率ではなく、個別の政策で対応していただくのが良いと思う。
「国民は賛成している」について
国民は払う税金少ないほうがいいですから当然です。「すべて増税するのと軽減税率とどちらがいいか」と聞けば、賛成は得られるでしょう。「 8%のままと軽減税率とどちらがいいか」と聞いてみたら結果は変わるのではないでしょうか?「軽減税率に賛成か反対か」という問いは、受け手によって解釈が変わってしまうので、アンケートの質問文として不適切です。
まとめ
軽減税率は国民には聞こえがいいですが、現状の案では低所得者対策にはなりませんし、新たな問題もたくさんはらんでいます。 しかし、こんなにコストばっかりかかって効果の薄い軽減税率をやるからには、きっと何かメリットがあるのでしょう。
単に増税するより支持を得られるとか、今後さらに増税しやすくするとか、贅沢税のようなものを導入しやすくするとか、会計ソフトが売れるとか、業界団体に対して力を持てるとか。
面倒な制度には賛成できないのですが、どうせ導入するのであれば、税率はもっと戦略的に定めてはいかがでしょうか。税率しだいでは、税収アップと低所得者の負担軽減の両方が実現できる可能性は十分あると思います。まあ、負担軽減といってもほんのわずかですから、これでは「低所得者対策」とはいえないかもしれませんが。
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