私のキッチンは、IHを置いただけのかなり簡易なものだ。もちろん一口しかない。だからというわけではないが、フライパンひとつでできる料理が好きだ。
アヒージョは、魚介、きのこ、野菜、なんでも美味しい。
たっぷりのオリーブオイルに鷹の爪とにんにく、塩は少しでいい。
ほたるいかと芽キャベツ、冷蔵庫にあった、しいたけの石づきも切って入れる。
台所に立ちたくなったのは、この本を思い出したせいだろうか。
私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。
ほたるいかを買いに行ったスーパーで、喪服で買物をする人を見た。
いつもなら気にも留めないのだろうが、自分もさっきまで着ていたのでつい目が行く。
こんな日でも、食材を買って、キッチンに立つのだろう。
料理を作って、食べる。
生きていく。
真剣に食材を選ぶ姿が、妙に心強く感じられた。