老後には一体いくら必要なのか。
最低限の生活をするならこれぐらい、趣味や旅行も楽しみたいならゆとりを持ってこれぐらい、というような数字を見ることがありますが、これまでこういった数字に全く納得ができませんでした。
理由は大きく2つあります。
まず、何十年も先の未来がどういうものか想像ができないということです。
インフレが進行して、コンビニコーヒーが1000円くらいするかもしれません。
技術が発達して、タダ同然で様々なサービスが受けられるようになっているかもしれません。
環境の変化だけでなく、自分自身もどうなっているかわかりません。
元気で暮らしているかもしれないし、体が弱っているかもしれません。
働くことができるかどうか、というのもとても大きな問題ですが、今と同じような感覚でいるのはまずいと思います。
AIが仕事を奪う、などと言いますが、老後にちょっとしたアルバイトをしようと思っても、新聞配達のような仕事は無くなっている可能性が高いし、コンビニだって機械化で無人になっているかもしれません。
(そのこと自体は決して悪い話ではありません。むしろ良い変化だと思います)
astudyinscarlet.hatenablog.com
老後のために用意しておきたい金額は、以下のように表すことができます。
(ひと月あたりの生活費 ー ひと月あたりの年金受給額) × 12 × 老後の年数
しかし、これでは変数が多すぎます。
・社会や物価がどうなっているかわからない。
(生活水準とそれに必要な金額が、現在の感覚とはズレている可能性があります)
・年金がいくら貰えるのかわからない。
(ねんきんネットで試算できますが、今のままの掛け金を納め続けることと、制度が変わらないことが前提にあります)
・自分が健康かどうかわからない。何年生きるかもわからない。
(さらに言えば、医療にいくらかかるか、ということも不明です。技術が発達して、誰でもケガや病気が簡単に治せる機器が家電として普及しているかもしれないし、自己負担が8割など制度の変更でお金がなければ病院にも行けないようになっているかもしれません)
予算を見積もるには、不確実な要素が多すぎるのです。当たり前ですが、未来のことは誰にもわかりません。
納得ができない2つめの理由は、想定されている生活水準に共感できないことです。
「老後に必要なお金は◯◯万円」というような話に出てくる「最低限の生活」というものには、とても疑問を感じます。
最低でも月に◯◯万円は必要、などとあっても、現在それ以下の金額で「最低限以上の生活」をしているつもりのわたしからすると、一体何にそんなに金がかかるのかと思ってしまうのです。
(おそらくですが、家に固定電話があったり、毎朝新聞をとったりしているような、少し前までスタンダードだった一億総中流なライフスタイルを想定しているのではないかと想像します)
医療費などはもちろんかかると思いますが、それ以外のことは現役時代よりお金がかからなくなることが予想されます。
何より、老後になればもう「老後のための貯金」をする必要がなくなるので、仮に収入が同じとするならば、現役時代よりもゆとりがあるはずです。
但し、インフレ進行の場合は、現役時代より質素な暮らしでも、必要な額面が増えるかもしれません。
いくら考えても、先のことはわかりません。
それでも、やはり「老後にいくら必要なのか」の目安は欲しいのです。
老後に必要なお金について、わたしが最も「わかりやすい」と感じたのは以下の考え方です。
老後が30年と仮定して、
360万円あれば年金にひと月プラス1万円の生活、
720万円あれば年金にひと月プラス2万円の生活ができる。
これは、「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」という本の中で山崎元氏が書いています。
拍子抜けするくらいシンプルです。
こう聞くと、今までの不安が何だったのかと思うほどわかりやすいです。
「最低限の生活」にいくら上乗せしたいか、だけ考えれば良いのです。
年金で最低限度の生活ができる、という前提に立っていますが、それぐらいの希望は持っても良いかな、と思います。
この考え方を知っておくと、「老後には最低でも5,000万は必要」などと言われても、それが「年金プラス14万円の生活」だとわかるので、どの程度の生活を想定しているのかイメージしやすくなります。
最近では災害などに対して「正しく怖がる」ということが言われますが、
老後についても、「正しく備える」ことが大切かもしれません。
↓ わたしが読んだのは旧版ですが、iDeCoやつみたてNISAにも対応した新板が出ているので、これから読むなら新板の方が良さそうです。