少しだが、HPにかかわる仕事をすることがある。
こうしてブログも書いている。
どちらも作業はPCで行うが、「スマホ対応」は必須の課題である。
スマホの表示が上手くいかないとき、
「もしもスティーブ・ジョブズが iPhone を横長に作っていたら」ということを考える。
そうなっていたら、スマートフォンの画面のスタンダードは横長であった可能性が高い。
その場合、スマホだからといってレイアウトをガラリと変える必要はなかっただろう。
横長の画面は、PCのミニチュア版だ。
PCより以前から、我々は横長のディスプレイに慣れ親しんでいる。
テレビである。
テレビ以前には、映画があった。
横長のスクリーン。
縦に長い映画というのは見たことがない。
もしかすると近いうちに、スマホ時代に合わせた「縦型の映画」というのが登場するかもしれない。
しかし今のところは、テレビも映画も、ずっと横長である。
映画より前、写真はどうだろうか。
驚くべきことに、昔の写真というのは、横型ではない。
古い家族写真や、偉人のポートレートは、たいてい縦型なのである。
(坂本龍馬の写真などを想像していただきたい)
これは、人間の姿が縦長だから、ということなのではないかと思う。
人物の全身を収めるためには、縦長が合理的だ。
(昔の写真というのは今よりずっと「記録性」を重視したものであったと思われる)
テレビや映画は、それを映すハードが横長で固定されているから、ソフトはそれに従うしかなかった。
しかし写真の場合は、縦でも横でも好きなように表現することができる。
近代の写真はどちらかというと横が多い印象だ。
(横向きの写真が主流になったのは、「誰かと一緒に撮る」「観光地の風景と一緒に撮る」ためには横の方が収まりが良い、ということもあるが、写真というものが「特別な記録」から、もっと身近なものになったから、より我々の感覚に近い形が採用されるようになった、ということなのかもしれない)
そして近年流行のインスタグラムはどちらでもない「正方形」である。
日常から、キラキラした部分を切り取るインスタグラム。人工的な「正方形」は、このメディアにはとてもよく合っている。
人間の視界は、当然、正方形ではない。
自然界には存在しない正方形。
それは、河川や山脈や文化を無視して勝手に引かれたアフリカの国境のような、ある種不自然なものでもある。
こういう流れでインスタグラムをとらえるととても興味深い。
スマホもまた、好きな向きで使うことができる。
動画を見たりする場合には横にして使う人がほとんどだろう。
ニュースサイトだって、横向きで読んだって良いのだ。
そうする人があまりいないのは、縦の画面で読むことを想定してサイトが作られているということもあるが、やはり、その方が見やすいからである。
小さい画面の場合には、縦の方が使いやすい。
人間の視界は、おそらくだが、横長ではないかと思う。
実感としてもそうだし、第一、目は横に並んでついているのだ。
360度カメラみたいなものだって、たいていは横向きに1周する。縦に回転する需要はあんまりない。
だから、当然横長の方が見やすいような気がするのだが、どういうわけか、スマホサイズだと縦の方が見やすいのである。
縦長の画面は「タイムライン」的な表示ととても相性が良い。
これは「横長の地層を縦に積み上げていく」という様式である。
もし横型の小さな画面でタイムライン的な様式を採用すると、せっかくの一覧性が損なわれてしまう。
ジョブスが iPhone を縦長に作ったのは、おそらく偶然ではないのだろう。
画面のことは置いておいて、端末についてだけ考えると、縦長の方が手で持ったときに収まりが良い。
表示はそれに合わせて工夫しろ、ということなのかもしれない。
一見シンプルに見える画面表示も、そこへ辿り着くには膨大な試行錯誤が必要なのだ。