minimalist's microcosm

ミニマリストの小宇宙

蜜蜂と遠雷

 

 

久しぶりに映画を見に行きました

「蜜蜂と遠雷」という作品です

 

映画「蜜蜂と遠雷」より 春と修羅 Spring and Asura for piano (0500)

映画「蜜蜂と遠雷」より 春と修羅 Spring and Asura for piano (0500)

 

 

 

以下、ストーリーには一切触れませんのでネタバレはありません

 

 

この映画は恩田陸さんの同名小説を映画化したもので

正直なところを申し上げますと

本の方が私は好みでした

これって凄く不思議なんですけど

 

音楽を扱った小説で

小説では音が一切なくて

映画にはある

しかも私は映画館で観てますから大音量の音楽があるわけですね

 

私は本の方を読んでたので

ストーリーというよりは本当に音楽が目当てで映画館に行ったんです

でその音楽を物足りないと感じてしまった

もちろん音楽はプロの方が演奏されているもので素晴らしいです

それをなぜ物足りないと感じたか

なぜ実際の音楽が文字だけの本にかなわないかというと

 

それはおそらく本を読んで自分の中にイメージしていた音がそれを上回っているからなんです

 

なぜこんなことが起きるのか

 

これって音楽だけじゃなくて

例えば私はこれまでも何度か名前出してますけれども菊地成孔さんという方を贔屓にしておりまして

この方の本にですね「服は何故音楽を必要とするのか?」という著書があります

 

服は何故音楽を必要とするのか? (河出文庫)

服は何故音楽を必要とするのか? (河出文庫)

 

 

音楽とタイトルに入っていますが今はそこは関係なくて

この本ではですね

いわゆるパリコレですとかそういったファッションショーですね

そういった 物が書かれるんですけれども

 

菊地氏の文章によって浮かぶものすごいきらびやかな何か

それこそ「天上の」としか言いようがないような本当に至福そのものを体現したような素晴らしい美しい そういう世界を想像するわけですけれども

実際にコレクションの動画とか写真とかを見た時に

何だこれだけのものかと思ってしまったんです

もちろん私は実際にその場にいたわけではないですから自分の目で見ていたらまた違う感想になるかもしれないです

ただ少なくともそれを記録した写真や動画について言えば思ってたのと全然違うんですよ

私が菊地さんの本を読んで想像したものの方が圧倒的に上なんです

それは具体的にどんな、というものではなくて漠然としたイメージで

私の能力ではそれを絵に描いたり文章に残したりすることも難しくて人に伝えるっていうことはできないんですけれども(それをしようと試みると途端に陳腐化してしまう)

でもとにかく私は現実以上のものを想像させられたわけです

 

これと同じことが恩田陸さんの本でも起こっている

天上の音楽を地上に降ろしてくることはできない

プロのピアニストがどんなに素晴らしい演奏をしても俳優さんがどんなに素晴らしい演技をしてもそれが想像を超えることは難しいんです

 

だから映画化が困難だって言われてたのももっともで

これを読んだ人が皆それぞれに自分の中にすごく良い音を想像するわけですよね

それを超えてくることは 相当難しいことなんですよ

(これを言ってしまうと、ほとんどすべての小説は「映画化が困難」になってしまうのですが)

 

映画には実際に音があって

それは魅力でもあるけれど同時に実際に音が鳴ってしまうということはその先のイメージはもうないんです

 

もちろんイメージにも限界はあります

想像できるのは

自分が想像できるものだけで

想像もしないようなものというのは永遠に想像することができない

だから絶対的にイメージや想像の方が上だとは思わないですけど

 

 

それでも

現実を上回るイメージというのは十分ありえることで

それを「させてしまう」文章も存在する

 

なんていうか

この本は実際の音楽に引けをとらないくらいに

「鳴って」いるのです

 

天上を再現することはできないが

天上を想像させることはできる

ということなのかもしれません

 

もしかして音楽とか絵画とかそういうものよりも 文学の方が

実際の視覚とか聴覚とかを伴わない分かえって「天上(という感じの何か)」に一番近いのかもしれないと そんなふうに思いました

 

 

誤解のないように言うと

この本は別に文学的とかそういうことではなくて

どちらかというと大衆的な感じです

だからすごく読みやすいし難しくないです全然

分厚い本ですけど読ませますよすごく

一気に読んじゃいます

 

文庫で買ったので最初は「2冊かあ」と思ったんですけれども

上巻を読み終わる頃には 2冊目があって良かった まだ読めると思わされていました

 

恩田陸さんの本は他にも何冊か読んでみたいと思います

それにしても夢中になれる本を読んだ時の満足感ってほんとすごいです

こういうことがあるから

読書は面白いですね

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)